2014年10月16日

泉質異なる2つの温泉宿めぐり「のんびり館」

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2014年9月某日

吊り橋のある秘湯の一軒宿、信夫温泉 のんびり館

 磐梯吾妻スカイラインに、ひと足早い紅葉便りが届く9月下旬。山峡を吹き抜ける風にかすかな秋の気配が漂うなか、高湯に風雅な一軒宿があると聞き、早速、向かうことにした。
 福島西ICから車で約20分。高湯街道を登りはじめてすぐ、道沿いに「信夫(しのぶ)温泉」の看板が見えてくる。資料によれば、信夫温泉は1930 (昭和5)年 に発見された、比較的新しい温泉らしい。高湯温泉と目と鼻の先の距離にあるものの、未だ温泉ガイドブックにも掲載されていない、知る人ぞ知る秘湯なのだという。

02橋下の渓流.jpg01橋.jpg03全景橋より.jpg

07客室特室露天風呂04.jpg05客室特室01.jpg08露天風呂廊下夕.jpg

 案内に沿って道を折れた先には、30台程が停ることができる広い駐車場がある。目指す「信夫温泉 のんびり館」はその奥だ。実は、高湯温泉中心部にも同名の宿がある。“ のんびり館 ”は信夫温泉と高湯温泉、さらに沼尻温泉と郡山市にも居を構えるグループ企業らしい。
 「信夫温泉 のんびり館」の一番の特徴が、何といってもそのアプローチだ。宿は“ 幸福(しあわせ)橋 ”と名付けられた長さ50m程の吊り橋を渡った先にある。「ちょっと、別天地気分ね」と、喜ぶ連れの後ろを歩きながら見下ろせば、高低差はざっと30m程あるだろうか。眼下を流れる渓谷と巨岩のダイナミックな景観は壮観だ。
 宿は山あいに溶け込む、こじんまりとした低層の外観だった。今宵の旅の我が家は、贅沢にも、和モダンな佇まいの専用露天風呂付の部屋。大きな窓の外には、あふれる緑を独り占めにする湯船が、美しい森の翠を抱いている。絵画のようなその景色に見惚れつつ、迫る秋の日没に急きたてられるまま、まずは宿の自慢の風呂へ。

22露天風呂廊下朝02.jpg24露天風呂朝男イメージ02.jpg13宝泉の湯夜男.jpg

14休憩酸素カプセル.jpg15休憩マッサージ椅子.jpg16読書コーナー.jpg35水槽フグ.jpg

肌にやさしい美人の湯、若返りの湯

 館内には、趣きの異なる風呂が貸切風呂を含め4つ点在している。真っ先に向かった「露天風呂」は、中庭をぐるりと囲む回廊の一角にあった。個人庭園のような自然の山並みを見晴らす風呂は、周囲の景観に似合う天然石を敷き詰めた湯船で、なかなかに味わいがある。高地らしい、凛と冷たい夕暮れの空気に肩をすくめ、ざぶんと肩まで浸かれば、声にならないため息が漏れる。かすかな硫黄臭を感じる湯は無色透明で、肌にトロリとした感触。湯加減は長湯に好都合のやや温めだ。先客がないことを幸いに、闇に溶けかかる稜線を眺めながら、壁越しに隣り合う連れと語り合いながらの愉快な貸切風呂タイム。
 部屋に戻りがてら立ち寄った「宝泉の湯」は、どこか懐かしいタイル貼りのシンプルな内湯。湯加減は露天より熱め。近くの休憩室には酸素カプセルや、マッサージチェアも見え、廊下の一角には、館主の趣味らしい推理小説や歴史本等が揃うポケットライブラリーもあった。
 あとで伺った話によれば、信夫温泉はアルカリ硫黄泉。源泉温度が低いため、適度に加温しているという。しかし、逆に低刺激のやさしいその湯質が“美肌の湯、若返りの湯”として、高湯温泉とは異なる魅力で愛されているようだ。
 ちなみに独創性あふれる一軒宿の夕食は、これまた個性的。ここの名物は温泉の源泉を利用し自社で養殖しているという、毒をまったく持たない珍しい“ 温泉トラフグ ”。フグと言えば通常、冬が旬だが、ここでは養殖のため一年中、様々なトラフグ料理が味わえる。宿では、他にも提携猟師が山で仕留めた猪肉や、山口の天然真鯛、北海道の原野で収穫した行者にんにくなど、産地直送で仕入れる確かな食材にこだわっている。
 飾らないスタッフの対応といい、本物志向の手料理といい、評判のもてなしに感じ入りながら、瀬音に包まれた部屋でまた、就寝前の月見露天の湯贅沢(笑)。

18渓流露天風呂01.jpg19開運の湯朝男01.jpg21朝食.jpg

26宝泉の湯朝男02.jpg28鯉.jpg29中庭イメージ02.jpg37展望デッキ.jpg

32客室和室.jpg33客室洋室01.jpg34エントランス売店.jpg

翠あふれる山懐の聖域にて

 翌朝、連れと向かったのは貸切露天風呂「渓流露天風呂」。宿では露天風呂以外の風呂は、貸切風呂を含め24時間いつでも自由に利用できる。不動滝から流れてくる渓谷を望む露天風呂は、あふれんばかりの緑と青空の下にさらされ開放感も満点。上流には大きな滑滝の姿も見える。耳に心地よい瀬音、軽やかに響く鳥の声、木々のさざめき、そして湯の音色。人工音が何一つ聞こえない穏やかな賑やかさに、心が研ぎ澄まされてゆく。
 何度も深呼吸して見渡した周囲の景色にふと、気付いた。ここから程近い高湯温泉と、この信夫温泉の植生はまるで違う。標高の高さのせいもあるが、強い硫黄泉のせいで、低木樹が目立つ高湯と異なり、信夫温泉には樹勢の良い巨大な樹木が目立つ。木陰の感じが、どこかふっくらと柔らかいのだ。これもまた信夫温泉の人気の理由かもしれない。
 雲型の湯船がレトロなもうひとつの内湯「開運の湯」を軽く楽しんだあと、腹を空かせて向かった食事は、手作りの寄せ豆腐やこんにゃく、契約栽培農家の特選コシヒカリなど、昨夜の感動に違わず、どれも宿の心意気を感じる元気がみなぎる味わいだった。
 朝の光と湯気が綾なす風情にほだされ、チェックアウト前に再度「宝泉の湯」で軽い湯あそび(笑)。ホウズキや水引、ガマズミが咲く中庭や、錦鯉が優雅に泳ぐ池まわりを散策しながら、緑に包まれた展望デッキで名残の夏の香りを胸に留める。
 今回私たちが利用した露天風呂付き客室の他、宿には一室毎に意匠や建材の異なる昔ながらの和室や、家族やグループ連れにも最適な和洋室、気軽で手頃な洋室もあり、目的に合わせたセレクトも自由自在だ。世話になった宿の方に礼を申し上げ、連れと意気投合のうえ、そのまま姉妹館の「高湯温泉 のんびり館」も訪ねてみることにした。

39玄関棟や.jpg41源泉タンク.jpg46四季の湯03.jpg45四季の湯イメージ02.jpg

47全景せせらぎ湯より.jpg48せせらぎの湯暖簾.jpg49せせらぎの湯女.jpg51河源泉下.jpg

53離れ棟.jpg57長命の湯貸切風呂離れ04.jpg54長命の湯離れ貸切.jpg

極上のはしご湯、高湯温泉 のんびり館

 信夫温泉から高湯街道をさらに登ること約15分。硫黄の香りが立ち込める道沿いに白い洋館風の「高湯温泉 のんびり館」が見えてくる。駐車場の脇には源泉もあるようだ。暖炉のあるロビーフロントで早速、日帰り入浴料(大人700円)を支払い、まずは内風呂の「四季の湯」へ。スペースの半分以上を湯船が占める風呂は、古き良き佇まいだ。大きな窓から射し込む光が青白い湯色を輝かせるなか、どっぷりと浸かれば、これだこれだ、と実感する高湯の力強い湯質が体に染み渡る。信夫温泉がたおやかな女性らしい湯だとすれば、こちらは荒々しい男性といったところだろうか。
 湯あたりに注意しつつ、早々に上がって向かった次の露天風呂「せせらぎの湯」は、一度、草履に履き替え外階段を降りた別棟にあった。背後の山景色に似合う木造りの素朴な湯小屋は、野趣あふれる佇まい。風呂の半分は屋根掛けされているものの、川を望む開放感は爽快。何より内湯同様、湯船から惜しみなく流れ出る源泉かけ流しの贅沢さがたまらない。湯船は中で段差があるため、入る際は足元に注意が必要だ。せせらぎの音色を聴きながら、のんびりと手足を伸ばす極楽(笑)。湯上り後は、初秋の風が吹き抜ける中庭で、連れを待ちながらの心地よい火照り冷ましとなった。
 「高湯温泉 のんびり館」には本館と別館があり、貸切風呂も含め計6つもの風呂がある。そのひとつ、好奇心のまま利用した貸切風呂「長命の湯」(50分2,160円)は、本館から敷地内の坂を100m程下りた離れにあった。湯棟は合宿や研修等に貸切で利用できる宿泊棟とつながっている。憧れの高湯の風呂を、別荘感覚で楽しめる施設があることも驚きだが、総檜造の内風呂と、山を望む広々としたオープンエアの露天風呂という、豪華なその施設もため息の出る贅沢さだった。

58一酔玄関.jpg59一酔食事処.jpg60一酔昼食天ざる.jpg

61一酔昼食鹿肉カレー.jpg63一酔露天風呂男.jpg65和室.jpg66和室イメージ.jpg

ふたつの宿がもてなす、ちいさな幸

 “ のんびり館 ”は、石臼で自家挽きした蕎麦粉による、手打ち蕎麦も人気だ。わざわざ遠方からも訪れるというその味わいは、敷地内にあるもうひとつの別館「一酔」でも楽しめる。建物内は一階が食事を提供する飲食スペース、二階は休憩処を兼ねたキッチン付の座敷、階段を下りた先には露天風呂も設置され、先の離れ同様、こちらも一棟まるまる貸切できるらしい。通常は、昼食処や日帰り露天風呂施設として運営している。昼時に立ち寄れる飲食店が少ない高湯のなかでも、嬉しい食事処だ。
 早速、「特製天ざるセット」(1,400円)と「鹿肉カレー」(800円・サラダ付き)を注文。吾妻山麓の自然水を使い宿の女将自らが毎日打つ、つなぎ無しの十割蕎麦は、のど越しのいい細麺。そばつゆも上品な味わいだった。
 気になる「一酔」の露天風呂は、山の湯らしい板張りで、小ぶりな浴槽はプライベート感もたっぷり。早くも貸切予定を考え始めた自分に気付き、思わず苦笑してしまう。
 ちなみに手打ち蕎麦は提供できる数が限られるため、確実に楽しみたいなら予約がオススメだ。蕎麦は「一酔」の他に「信夫温泉 のんびり館」でも味わえる。10室程の「高湯温泉 のんびり館」の客室は、いずれも渓流に面した昔懐かしい佇まいの和室。宿から歩いて行ける距離には共同浴場の「あったか湯」もあり、温泉散策も楽しめる。
 仲睦まじい姉妹のように隣り合う2つの温泉で、文字どおりそれぞれの趣きを愉しむ、のんびりとした時間を過ごした今回。館内で見かけた資料によれば、両宿は1964年に開催された東京五輪で、日本人初の金メダルに輝いた三宅義信氏と親交が深く、信夫温泉の吊り橋“ 幸福(しあわせ)橋 ”も、同氏の命名に因るものだという。小柄な体格から“ ちいさな力持ち ”と国民に親しまれた三宅氏。ふと今朝、吊り橋で道を譲りあいすれ違った、仕入れ業者らしき方との会話を思い出した。「お客も従業員も社長も業者もね、皆ここを通るんだよ」。ゆく人、来る人、出会う人。一本の道がもたらす日本人の美しい、江戸しぐさ。そんな心のふれあいもまた、橋の名どおり“ ちいさな力持ち ”たる2つの宿がくれるささやかな“ 幸福 ”かもしれない。




■「信夫温泉 のんびり館」

〒960-2251
福島県福島市桜本字木通沢4-1
TEL/024-591-1212 

チェックイン 15:00〜(最終18:00)  ・チェックアウト 〜10:00 
日帰り入浴/700円 
※日帰り貸切風呂50分1500円

[入浴時間]
ご宿泊のお客様/24時間
日帰り入浴/10:00〜13:00
日帰り貸切渓流露天風呂利用/10:00〜受付13:00

[温泉の利用形態]
天然温泉・加温あり 

[アメニティ]
 シャンプー、リンス、ボディソープ、ドライヤー

[交通のご案内]
■東北自動車道
福島西I.Cから国道115号線〜県道5号線16km(約20分)

■福島交通路線バス
JR福島駅西口から「高湯温泉」行・「玉子湯前」下車(約40分) 徒歩約3分

※福島駅から無料送迎バスあり(前日までに要予約)
TEL024-591-1212(受付時間9:00〜17:00)



■「高湯温泉 のんびり館」

〒960-2261 
福島県福島市町庭坂字高湯14-1
TEL/024-592-1126(1127)

チェックイン 15:00〜(最終19:00)  ・チェックアウト 〜10:00 
日帰り入浴/700円 
※本館 貸切風呂 50分1,080円
※別館 長命の湯(内風呂・露天風呂) 50分2,160円 

[入浴時間]
ご宿泊のお客様/大浴場 24時間・露天風呂 5:00〜23:00
日帰り入浴/本館 内風呂・露天風呂10:00〜15:00
      別館一酔 露天風呂/10:00〜16:00
      別館一酔2階休憩所のご利用/10:00〜16:00

[温泉の利用形態]
天然温泉・源泉100%。完全放流式、加水なし、加温なし 

[アメニティ]
 シャンプー、リンス、ボディソープ、ドライヤー

[交通のご案内]
■東北自動車道
福島西I.Cから国道115号線〜県道5号線16km(約30分)

■福島交通路線バス
JR福島駅西口から「高湯温泉」行・「高湯前」下車(約40分) 徒歩約5分

※福島駅から無料送迎バスあり(前日までに要予約)
TEL024-591-1212(受付時間9:00〜17:00)

↓パンフレットはこちら
高湯のんびり館 パンフ表面.jpg

高湯のんびり館 パンフ中面.jpg



posted by yusanjin at 12:56| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする