2013年12月28日

開湯400年の宿「安達屋」

02安達太良の山吾妻小富士s.jpg04薬師堂01s.jpg03安達屋玄関s.jpg

08ラウンジ灯s.jpg09ラウンジ灯イメージ01s.jpg13客室s.jpg

2013年12月某日

高湯最古の湯宿、安達屋

 「年満月 としみつづき」とも呼ばれる12月。今年の“ 湯旅 ”の締め括りにと、ふたりで選んだ高湯温泉。向かう車窓からは、稲刈り後の田園越しに、遠く雪をいただく吾妻小富士や安達太良の山並みが、冬の西日に物語のような姿で佇んでいた。
 安らかな眺望に癒されながらたどり着いた先は「安達屋」。温泉街の中ほどにある共同浴場「あったか湯」の向かい、薬師堂の傍らにひっそりと建つ湯宿だ。ここは今から約400年前の慶長12(1607)年、初代、菅野三四郎が夢のお告げにより岩を砕いたところ、温泉が湧きだしたという開湯伝説を今に伝える、高湯最古の宿だという。高鳴る期待を胸に紅い暖簾をくぐりいざ、中へ。
 昔ながらの日本家屋をリノベーションした館内は、自然石を積み上げた帳場をはじめ、ランプや和骨董、ロッキングチェアなどのアンティークが品よくしつらわれ、山宿らしい佇まいだ。ところどころには宿主の趣味だろうか、モダンなステンドグラスのフロアライトが灯り、館内をノスタルジックに照らし出している。ジャズの音色が静かに流れるなか、「ほっとする素敵な雰囲気ね」と、連れ。
 大きな囲炉裏のあるラウンジで、ウェルカムティーの抹茶をいただいたあと、長い廊下を歩き案内された部屋は、落ち着いた広縁付きの和室だった。荷物を降ろし、短い冬の陽射しに急かされるように、早速、予約していた貸切露天風呂「薬師の湯」へと向かう。この宿の最大の魅力は、なんといっても贅沢な風呂の構成だろう。男女別の内湯の他に、圧巻の大露天風呂、加えて貸切風呂が3ヶ所もあり、そのすべてで白濁した硫黄泉が源泉掛け流しで楽しめる。


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19一の湯湯口s.jpg21一の湯夜01s.jpg27貸切風呂ラウンジs.jpg

山の湯の贅にひたる、貸切露天風呂

 風呂は本館の最奥、暖炉のある土間サロンを経て、一度、外に出た離れ棟にあった。「薬師の湯」は、平成24年にリニューアルされた人気風呂で、趣異なる“ 一の湯 ”と“ 二の湯 ”の2つが隣り合っている。湯舎までは鄙びた茅葺きの庭門や、リョウブやマユミなどの植栽、小滝を配した情緒あふれる庭園の小路が続く。
 「贅沢すぎやしない?」想像以上の広さとその佇まいに、思わず嬉しい悲鳴をあげた彼女の言葉どおり、青みをおびた乳白の湯が優しげな光彩を放つ「薬師の湯」は、これぞ山の湯、と感じ入る岩と自然木の造作が絵になる佇まい。ひょうたん型の木造りの湯船は、ゆうに大人4人は入れる。いで湯の音色が響く静けさのなか、陽が落ちて寒さを増した冬の気配に、囁くような会話を楽しみながら、肌にとろりと滑らかな湯を堪能。ぬる湯だったとはいえ、そこはやはり源泉掛け流しの高湯のこと。少々、のぼせた体をひきずりながら、湯上り後はパチパチとはぜる薪を眺める暖炉サロンでしばしの小休止。火照った体に、山の天然水をぐいと飲み干す。

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37冬料理06s.jpg39ラウンジ灯夜s.jpg40ラウンジ灯でアイスs.jpg

小粋な趣向の囲炉裏端御膳

 楽しみにしていた夕食は、個室スタイルの会食場で囲炉裏を囲む、小粋なスタイルだった。案内された座敷は、頃合を計った岩魚や五平餅の串焼きの香ばしい匂いが立ち込めている。宿の方に伺えば、ちょうど献立が変わったばかりとのこと。品書きには合鴨や雪鱒、甘鯛など、酒党垂涎の冬の幸が満載だ。雰囲気ついでにと、囲炉裏で燗をする“青竹徳利”を注文。ひさびさの差しつ差されつの夫婦善哉(笑)となった。舞茸と合鴨、豚肉等の具材を味噌仕立の出汁でいただく「山賊鍋味噌仕立」や、素材の上品な甘さが絶妙な「白菜甘鯛月冠、蕪餡掛」など、目に腹にうれしい発見を運ぶ季節の創作逸品を堪能。
 デザートは、食事の際に渡されるチケットを持参すれば、雰囲気のいい夜のラウンジで、夜9時までいただける趣向だ。食事後にそのまま楽しんでもいいが、時間が早ければ、もうひと風呂浴びてからサロン気分で立ち寄るのもいい。客の過ごし方に、寄り添うもてなしが心憎い。

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46大気の湯洞窟風呂01s.jpg44大気の湯夜湯口s.jpg47露天風呂通路傘s.jpg

名物大露天で星空混浴

 部屋でひと息ついた後、いよいよ宿の名物である大露天風呂「大気の湯」へ。この風呂は、ご婦人用「姫の湯」と殿方用「不動の湯」に併設された大露天風呂で、脱衣所と内湯までは完全に男女別であるものの、その奥に続く大露天風呂でひとつになる、いわゆる“混浴”。女性が安心して利用できるよう、現在、夜の6時から9時までは「大気の湯」も女性専用タイムを設けているが、それ以外の時間帯は男性も自由に楽しめる。そうとは知らない連れが、女性専用風呂から衝立を挟んだ先にある混浴ゾーンで男性陣とニアミス、というハプニング(笑)も。
 この「大気の湯」でまず驚くのが、その圧巻な奥行だ。ざっと20m以上はある。夜の闇に白く浮かび上がる湯は、行けども行けども終わりがない。奥へ奥へと誘う湯船には、膝丈程度の浅い寝湯や打たせ湯をはじめ、肩がとっぷり浸かる深い場所まであり、温泉テーマパークさながら。足元が全く見えない白濁の湯だけに、手探り(足探り?)状態の探検気分も愉快だ。中でも山肌に張り付くように造られた洞窟風呂は不思議と落ち着く場所で、熱すぎず温すぎずの湯加減に、時を忘れ瞑想しながらの、またもや長湯。 
 すっきりとした気分で外に出て天を仰げば、空には満天の星々の歓迎も。歓楽的な開発をあえて避けてきた高湯温泉は、美しい星空でも知られている。屋根類らしきものが一切なく、天にむき出しの開放感を誇るこの「大気の湯」は、雨や雪の日も番傘をかぶり大自然に身をゆだねる、大胆豪放な湯浴みが満喫できる。

54不動の湯殿方s.jpg57姫の湯婦人s.jpg58婦人露天風呂s.jpg

59朝食ブッフェs.jpg60朝食会場暖炉図書s.jpg61朝食会場図書s.jpg

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湯治客気分の、湯浴み三昧
 
 早々と目覚めた翌日。青い山嶺の美しさに見惚れながら、ふたり連れ立って朝風呂へ。宿が湯治客の癒しを祈念し、享保年間に建立したという薬師堂の近くに祀った不動明王に由来する「不動の湯」は、椿のステンドグラスと重厚な石の湯船、水瓶を肩に担ぐ女神像をあしらった湯口が、昭和の洋館を思わせるレトロな造りだ。
 一方、先客がいなかったのを幸いに、連れの手招きで刹那拝見したご婦人用風呂は、壁、天井に至るまで対照的な山小屋風の佇まい。夜9時以降、混浴タイムとなる「大気の湯」を楽しめない女性のために、充分な広さと野趣あふれる専用の露天風呂もある。「大気の湯」を小ぶりにしたような寝湯のある造りは、中央に配された四阿(あずまや)が、景色に不思議なリズムを与えている。「姫の湯」の名は、作家、泉鏡花の小説で吾妻を舞台とした権現天狗と姫神のロマンスからきているという。
 朝食は、昨夜と異なる大きな暖炉が印象的な会場でのブッフェスタイル。うれしい朝カレーをはじめ、豊富な和洋の惣菜が並ぶ。ふと気づけば壁面の書棚には、びっしりと山岳関連の専門書籍が。聞けば、宿の先代の社長は長年、吾妻連峰にある“ 慶応吾妻山荘 ”を運営する山岳愛好家だったらしい。そういえばラウンジにも、日本人初のエベレスト登頂者である植村直己氏や、ヒマラヤ・マナスルの日本初登頂を果たした槇有恒氏の直筆による色紙もあった。高湯の歴史を刻んできた老舗ならではのエピソードだ。
 連れの猛烈なリクエストで、チェックアウトまでの時間を利用して、再度「大気の湯」へ挑戦(笑)。時間帯では完全に“混浴タイム”だが、勇気をふりしぼった相方のご褒美か、はたまた執念か(笑)、贅沢にも二人占めの幸運なひとときとなった。白昼にあらためて風呂を見渡せば、自然石や丸太をリズミカルに配した造りは、どこを切り取っても実に絵になる。この時期の枯淡な風格もいいが、緑の季節もさぞかし美しいに違いない。

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 帰りは高湯温泉のふもと、国道115号線を南下した「あづま総合運動公園」の一角にある「福島市民家園」へ寄り道。文化財である古民家の保存を目的とした「福島市民家園」は、約11万uの敷地に江戸中期から明治初期頃の茅葺きの養蚕農家や商人宿など、9棟が移築展示されている。中でも国の重要文化財に指定された芝居小屋は希少な遺構で、その威風堂々たる姿はまさに必見。道端の屋敷神や太鼓橋、建物内の高枕や布団など、細かなディティールも興味深い。現在は入園料も無料だ。高湯の温泉行楽がてら、ぜひ立ち寄りをおすすめしたい。
 全国的に厳しい寒さが予想される今冬。深い雪に抱かれた高湯の白く長い季節が始まる。しかし、その厳寒さこそが、冬の高湯遊びの真髄であり、東北屈指の山岳湯郷の古今変わらぬ洗礼でもある。この地で出会う心地よい懐かしさや新しさも、そこに息づく佇まいと人々が育んできたもてなしの無形遺産だ。あるがままの自然に、迷うことなく400年寄り添ってきた老舗宿の静かな誇りに、感謝にも似たくつろぎを憶えた旅時間。思い出すたびに心温もるこの記憶もまた、名湯、高湯の、しあわせな“ 湯あたり ”だろう(笑)。



■四季を彩るいこいの宿「安達屋」

〒960-2261 
福島県福島市町庭坂字高湯21
TEL/024-591-1155
http://www.adachiya.jp/

チェックイン 14:00  ・チェックアウト 〜11:00 
日帰り入浴/10:00〜13:00 700円

[入浴時間]
ご婦人内湯「姫の湯」
殿方内湯「不動の湯」
大露天風呂「大気の湯」(※18:00〜21:00は女性専用)
貸切露天風呂「薬師の湯」〈一の湯・二の湯〉(要予約)6:00〜24:00
貸切風呂「ひめさ湯り」(要予約)7:00〜21:00(※22:00〜6:00はフリー)

[温泉の利用形態]
天然温泉・源泉100%。完全放流式、加水なし、加温なし 
(※「薬師の湯」は季節により加熱水を給湯)
 
[アメニティ]
 大浴場と内湯/シャンプー、リンス、ボディーソープ、石鹸、ドライヤー等

[交通のご案内]
■東北自動車道
福島西I.Cから国道115号線〜県道5号線16km(約30分)
■福島交通路線バス
JR福島駅西口から「高湯温泉」行・「高湯前」下車(約40分)

※福島駅西口まで送迎いたします(要予約)
【お迎え】午後3時/【お送り】午前11時

↓パンフレットはこちら
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■福島市民家園

〒960-2155 
福島市上名倉字大石前地内(あづま総合運動公園内) 
【開園時間】9:30〜16:30 
【休み】火曜(祝日の場合は翌日)及び年末年始 
【料金】無料
【問合せ先】024-593-5249
http://minka-en.com/

[交通のご案内]
■東北自動車道
福島西I.Cから国道115号線(約10分)
■福島交通路線バス
JR福島駅西口から「佐原」行・「室石」下車、徒歩約10分




posted by yusanjin at 18:41| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする