2012年10月05日

天空の宿「花月ハイランドホテル」

00 見出し用 朝6階客室景雲海に輝く 小.jpg

2012年9月某日

雨奇晴好の高湯路へ

 もし、誰かに好きな雨の季節はいつか、と聞かれれば、間違いなく秋だと答えるだろう。日本には一年に四度、雨を楽しむ季節が訪れるという。 菜の花が咲く季節の“菜種梅雨”、梅の実が熟れる頃の“梅雨”、秋草に月の雫の吹きむすぶ“秋霖”、そして山茶花をうるおす“さざんか梅雨”。中でも「秋霖 しゅうりん」は、しとしととそぼ降る秋の長雨を指す。ひと湿りごとに、あでやかな装いへ季節を染めるこの秋雨は、森を静かな眠りへ誘うやさしい子守唄のようだ。
 秋分を過ぎた9月末、そんな思いを抱えながら、つややかな緑に癒され高湯への雨の高速道をひた走る。明るい時分に着く予定が、途中、思わぬ渋滞に阻まれ、目指す高台のホテルへ到着する頃には既に宵闇。評判だという眺望は明日への持ち越しとなった。
 パノラマ道路として“日本の道100選”にも名を連ねる磐梯吾妻スカイラインの入口手前にある「花月ハイランドホテル」は、温泉街の最奥にある。こじんまりとした宿が並ぶ高湯温泉街で異彩を放つ、堂々たる規模の近代的ホテルだ。広い駐車場の奥には三角屋根が印象的な本館棟と6階建の新館棟がある。標高800mの敷地からは、晴れた日には眼下に福島市街地の夜景が一望できるようだが、あいにく、今日の空の機嫌はいまひとつのようだ。


01 浴場廊下1 小.jpg02 空中露天男夜 小.jpg03 夕食セット 小.jpg

04 夕食あわび 小.jpg
05 夕食デザート 小.jpg06 夜景客室6階 小.jpg


高湯大観の宿、花月ハイランドホテル

  夕食までの間、早速、ひと風呂浴びることにした。湯舎は本館2階フロアから趣のある木造りの長い廊下で「空中露天風呂 杜の湯」、「貸切露天風呂 ひめさ湯り」、「大浴場 木の湯」と続く。3つの風呂はそれぞれに独立して造られているようだ。まずは2010年にリニューアルしたという露天風呂へ。運よく先客は1人。石材と檜をあしらった湯船には、青みがかった乳白色の源泉が滔々と湯をたたえていた。湯ざわりは硫黄泉らしい肌にトロリとした感触。今日の温度は雨のせいか少し温めだ。加水・加温を一切しない高湯のいで湯は季節や天候に温度が左右される。その気まぐれさにつきあうのも、この温泉ならではの愉悦だろう。ライトアップされた中庭を望みながら、いつもより時間をかけて湯あみできる恩恵に感謝。常連だという先客の話によれば、昼間、晴れていれば、ここから吾妻連峰の山並みが望めるらしい。明朝の幸運を互いに笑いあいつつ、風呂を後にする。
 湯上りの体に待っていたのは料亭街での心躍る夕食。明るいホテルスタッフの声に出迎えられ案内された小上がりには、膳がしつらわれ、色とりどりの山海の滋味がところ狭しと並んでいた。メインは焼きずわい蟹と、あつあつの陶板焼きでいただく歯ごたえも美味い鮑の酒蒸し。小ぶりながらも、見た目も豪華な丸々1個の鮑に、ついつい酒も進む。福島らしい水菓子の白桃羊羹まですっかり楽しみ、ほろ酔い気分で重くなった腹をさする。
 部屋に戻る頃には、雨も小降りになっていた。贅沢なまでに広い新館のベランダから、時折、眼下の景色を気にしながらの湯談義。どれくらい経っただろうか。何気なく窓の外を見た連れが、思わず歓声をあげる。視線の先には、雲の切れ間に美しい福島の街の灯が空中都市のように、ぽっかりと浮かびあがっていた。「せっかくだから、明かりを消してみましょ」そう笑う彼女の提案で、照明を落としてみる。部屋に一気に流れ込む闇のなか、少し肌寒い雨上がりの風に半纏を羽織り、二人占めの特等席で星の街のパノラマを堪能。そのまま興が乗り、またひとさし、ふたさしの夜酌へ…。どうやら風呂に向かうには、少々、深酔いしすぎてしまったようだ。


11 早朝6階客室山側景2 小.jpg07 空中露天男早朝 小.jpg10 早朝客室パノラマと人 小.jpg

09 早朝の客室パノラマ 小.jpg


13 温泉神社 小.jpg
14 あったか湯公園1 小.jpg15 あったか湯公園2 小.jpg


早朝の眺望露天と、足湯散歩

 
  薄紫色の朝ぼらけ。独り早々に起床し露天風呂へ。翡翠色の湯に浸かりながら、ゆっくりと陽が明けるのを待つ。吾妻連峰の山々も、今日は歓迎ムードのようだ。まだ少し小雨が残るものの、美しい山渓にゆっくりと雲が這い上がるさまは日本神話の“ やまとは くにのまほろば ”の世界を彷彿とさせる。山々が息吹を吹き返す朝の霊妙な空気に体が目覚めていく。

 部屋で私を待っていたのは、日本画から抜け出てきたかのような青い山稜だった。ゆらゆらとたなびく雲越しにうっすらと、昨夜見た福島の街並も見える。日の移ろいとともに姿を現したホテルの眺望に贅沢感は一層極まる。連れも起き、目の前で刻々と移り変わる景色に「まるで、動く美術館ね」と、感慨深げだ。
 早朝から感動の景色にほだされた連れにせがまれ、ホテルから歩いて15分程の温泉神社まで散歩に行ってみることにした。道沿いには、ところどころに濛々と湯気が立ち昇っている。ほどなく、自噴源泉が合流するちいさな川沿いに、小ぶりながらも風格のある石造りの社が現れた。資料によれば開湯以来、約400年間、この地に祀られてきたという。土地の人々の信仰を物語る神前幕と御幣が掛けられた社には経年の風雨を耐えた如来像らしき古い石像が2体、安置されていた。2人で静かに手を合わせる。神社の向かいには毎分100リットルの源泉足湯が楽しめる「あったか温泉公園」もあった。通常、温度は41度くらいらしいが、昨夜の雨のせいか足を浸すと少々温め。ゆらゆらと踊る湯の華を眺めながら、文字通りの朝の“休足”を満喫。


16 全景 小.jpg17 ロビーと人と雲海 小.jpg

12 早朝6階客室景雲海 小.jpg19 客室イメージ椅子と雲海 小.jpg21 朝客室雲海眺める人 小.jpg

20 遅朝6階客室雲海パノラマ2 小.jpg

千変万化、絶句の雲海劇場
 
 ホテルに戻る頃には清々しい秋晴れの空が顔を出し、山を背に佇む山荘風の建物をくっくりと浮かび上がらせていた。何気なくロビーラウンジから眼下へ目を向けた瞬間、思わず息を呑む。雲海だ。“ 運が良ければ…”と、公式サイトにもうたわれていた、このホテルだけの絶景だ。急ぎ足で部屋へ向かいカメラを手にとる。あきらめかけていただけに、思わぬ天のご褒美に心は子供のようにはやる。天と地の境を無くし青白い陰影を落とす山々は、まさに雲の海原に浮かぶ小島のようだ。どこからか荘厳な音色さえ聞こえてきそうな天上界の眺めに思わず言葉を失い、静謐で神々しいその姿に酔いしれる。「神社詣でのご褒美かも」景色に驚きながらも、少し得意げな連れを傍らに、何度もシャッターを切った。まもなく迎える紅葉の季節の想像を絶するだろう美しさに想いを馳せる。


23 貸切露天ひめさ湯り壱 小.jpg22 貸切露天ひめさ湯り弐 小.jpg25 朝食セット 小.jpg

27 大浴場木の湯女 小.jpg33 浴場廊下2 小.jpg29 大浴場木の湯男2 小.jpg

圧巻の広さを誇る、貸切露天と大浴場

 
  朝食までの時間を利用し、予約していた「貸切露天風呂 ひめさ湯り」へ。露天風呂同様、2010年にオープンした貸切露天風呂は、ゆうに10人は入れるだろう広い湯船と贅沢な造りが圧巻だ。風呂は2つあり、それぞれに趣が異なる。利用は90分で1,050円と手頃で日帰り入浴にも対応。小さな旅館の浴場ほどもあるだろう広い貸切風呂で、気の合う仲間や家族とたっぷりと源泉掛け流しの湯三昧にひたれるのも、このホテルならではの醍醐味だ。厳寒の季節となる1月末〜3月末頃は、湯温調整のため貸切風呂は営業をしていない。利用する際はあらかじめ、問い合わせておくといいだろう。
 お腹を空かせていただいた朝食は、体が悦ぶ鉄鍋のアサリ汁付だった。食事後は、部屋でひとやすみしたあと、満を持して「大浴場 木の湯」へ。高湯でも屈指の規模を誇る大浴場には広い脱衣場とカランがあり、手入れされた太い梁と天然木の柱がどこか懐かしい雰囲気だ。解放感あふれる全面ガラス張りの窓からは自然林越しに、季節折々の山並みが見渡せる。やさしい木肌と調和する乳白の湯面には周囲の緑が、うっとりするような美しい彩りで映り込んでいた。湯舎へ続くアプローチの途中には座敷の湯上り処をはじめ、穏やかな笑みをたたえた木造の花月菩薩像も祀られ、明治20〜30年代に景況を呈した旧庭坂村高湯温泉場の銅版画など、古き良き昔ながらの情緒も漂う。


34 ロビー 小.jpg35 玄関ホワイエイメージ 小.jpg37 昼景駐車場より 小.jpg


  ロビーラウンジで、ガイドブック片手に今日の観光予定を談笑しあう宿泊客の姿を眺め、自然豊かなこの地に、暮らすように旅をする憧れを連れと語り合う。空は昨夜とは一変、陽射しも眩しいほどだ。「紅葉の季節も、いいですよ」にこやかな笑顔を見せる支配人の声に送られ、晴れ渡る眺めに後ろ髪を引かれる思いでチェックアウト。
 鄙の温泉郷イメージのある高湯で、あらゆる人々の願いに応える充実の施設を誇る天空の宿。ゆったりとした館内の造りとは対照的に、刻々と姿を変える唯一無二の眺望は、まさに目の離せない愉快な忙しさかもしれない(笑)。知られざる高湯の、心地よく期待を裏切る贅沢な楽しみに触れた旅だった。効能豊かな高湯の湯ぢからと、風渡る天上の眺め。心と体が求める2つの“別天地”が、ここにある。

 

■「花月ハイランドホテル」

〒960-2261
福島県福島市町庭坂字神の森1-20
TEL/024-591-1115 

http://www.kagetsu.net/

チェックイン 15:00  ・チェックアウト 〜10:00
日帰り入浴/10:30〜22:00 600円
※入浴回数券6,000円(11枚綴り)あり

[温泉の利用形態]
天然温泉・源泉100%。完全放流式、加水なし、加温なし
 
[アメニティ]
 大浴場と内湯/シャンプー、リンス、ボディーソープ、石鹸、ドライヤー等

[交通のご案内]

■東北自動車道
福島西I.Cから国道115号線〜県道5号線16km(約30分)

■福島交通路線バス
JR福島駅西口から「高湯温泉」行・「ハイランド前」下車(約40分) 徒歩約2分

※福島駅西口まで送迎いたします(要予約)
【お迎え】午後3時/【お送り】午前10時30分

★紅葉の名所として名高い磐梯吾妻スカイラインのスタート地点まで車で約1分。
 高湯温泉から土湯峠へ吾妻の山並みを縫う雄大なパノラマコースは必見です。
 <〜平成24年11月15日(予定)/冬季閉鎖>
※通行料は恒久的に無料化されました
 


↓パンフレットはこちら
花月HHパンフ表.jpg花月HHパンフ中.jpg

 
 
 
posted by yusanjin at 14:20| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする