2012年02月25日

高湯温泉・共同浴場「あったか湯」

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2012年2月某日


極上温泉、此処にあり

 冬にひたるなら山がいい。稀にみる豪雪となった今冬、ひさかたの雪晴れに誘われ連れと2人、高湯に足を向ける。標高750m。高地にある立地から山形の蔵王温泉、白布温泉と並び古く奥州三高湯と呼ばれた高湯温泉は、福島の西、吾妻山の中腹にある。紅葉の絶景で知られる磐梯吾妻スカイラインの入口(土湯峠からなら出口)あたりだ。秘湯と呼ばれる山峡の湯治場ながら、東北自動車道福島西ICから約16kmとアクセスもいい。
 源泉は10ヶ所。美しい白濁の湯は体にじんと沁みる硫黄泉で、糖尿病や皮膚病などに効能があると言う。宿に着いたのは辺り一面を埋め尽くす雪がほのかに発光し始めた日暮れ時。今冬の積雪は1メートル近くはありそうだ。雪掻きした後だろうか、ところどころに聳え立つ雪山も見える。お楽しみの雪景は明朝までのおあずけとしよう。
 翌日も天気は快晴。評判だと言う「あったか湯」へ朝一番で向かうことにした。陽光を浴び眩しいほどに煌めく白い世界はさながら昔ばなしの山郷だ。やがてぽつりと湯治湯屋風の建物が見えてきた。ほんのり硫化水素の香りも漂っている。パンフレットによれば、ここは平成15年に開業した共同浴場で年間約9万人もの利用者で賑わう人気の施設のようだ。建物には内湯がなく、すべて露天風呂という一風変わった施設だと言う。駐車場下には自噴源泉、高湯26番《滝の湯》があり、木製の湯樋による高湯温泉自慢の源泉かけ流しの給湯方法を間近に見ることができる。
 棟内に入ってすぐ小さなロビーと番台がある。その奥には心地よさそうな座敷の休憩室も見える。「本日、一番のりですよ」と微笑む番台さんに挨拶を交わし自販機で購入した入浴券を渡す。今回は3つある浴場から、贅沢な貸切風呂をチョイス。利用は50分、2人で1,500円だ。共同風呂なら大人1回250円という料金も嬉しい(12回分2,500円の回数券も有)。

s01 全景ひき★DSC00289.jpgs04 ロビー★DSCN6597.jpg

s05 番台★DSC00280.jpgs06 ロビー★DSCN6599.jpg

二人占めで愉しむ、贅沢風呂

◎家族風呂
 浴場は階段を降りた場所にあった。石造りの貸切風呂は時間帯のせいか少し暗めだが雰囲気はいい。天井には太い梁が交錯する立派な屋根もある。源泉から直接送湯されてくる木樋と石でできた2つの湯口の意匠も面白い。周囲にめぐらされた大和塀の隙間から射し込む朝の光が、立ち込める湯気を照らし出し幻想的な景色を描いている。
 今日の湯は水色がかった白濁色。湯色はその日によって変わるそうだ。温度は42度くらいで少々熱め。湯口に手をあてがい湯をすくうと微細な湯花が手の中で踊っている。貸切風呂は予約制で人数分の入浴券の他に貸切料が1回1,000円。2日前から予約できる。利用時間は受付で鍵を受け取り返却まで50分だ。冬季は吹雪等で閉鎖もあるため、当日予約が基本。気候によっては共同浴場である男女湯の温度確保のため、貸切風呂は閉鎖されることもあるらしい。此処の湯を貸切でゆっくり堪能したいなら、前もっての確認が必要だ。
 気になる湯ざわりは石膏ミョウバン成分(カルシウム、アルミニウム、硫酸)が豊富に含むせいかとろみがあり、細君も大喜びの様子。せっかくの一番乗りだから、共同浴場も入っていきましょう、とご機嫌な彼女の言で、男女別の風呂にも行くことにした。ふと気付けば湯に浸かっていた部分がすっかり紅潮している。高湯の湯ぢからは油断禁物だ。

s08 階段★DSCN6592.jpgs09 のれん★DSC00278.jpgs16 家族風呂ゆぐち★DSC00271.jpg

s11 家族風呂★DSC00260.jpgs12 家族風呂★DSCN6565.jpg

比類なき、天恵のぬくもり


◎女湯
 客がいないのをこれ幸いと、連れの手招きで女湯もちょっと見学。脱衣所は貸切風呂同様に狭めで、棚に籠があるだけのシンプルな造りだ。扉の向こうにはすぐ露天風呂がある。こちらも半分屋根があるが、円形の風呂は貸切より視界が開け明るさと解放感がある。見ると湯船の向こうを遮るように湯樋が走っている。どうやら先程の貸切風呂に続いているようだ。
 湯船は岩造りで小ぶりだ。高湯では宿を含め、温泉街にある浴場すべてが源泉かけ流しをしており湯を循環させていない。温度調節は湯量の開閉のみで行われている。それゆえに湯温調整に手間のかかる大きな湯船は存在しない。つまり季節の天候の変化がそのまま湯温に響いてくるという訳だ。ここでは自然といで湯の絆がより深いのだ。
 女湯のカランはわずか3つ。シャワーやシャンプー、石鹸はない。元来、露天風呂は屋外にあるため衛生管理上、法律でこれらを設置できない。とは言え、そこは強烈な温泉成分を誇る高湯のこと。湯が肌に合わない人のために湯上りに硫黄成分を洗い流すことを目的に、特別にカランが設置されている。おみそれする。まさに大人のマナーが試される温泉浴場だと言えよう。
 冴え冴えとした青空のもと、青磁に輝く湯に浸かり夫婦で至福のため息。満天の星空もきれいでしょうねと、いつまでも話がつきない細君の脇で、予定外の長湯に少々焦り始めた小生。スリリングな思いでそろそろ退散することにした。


s18 女湯★DSC00214.jpgs26 女湯ゆぐち★DSC00240.jpg


s20 女湯★DSCN6504.jpgs21 女湯★DSCN6507.jpg

生まれたての春と湯に憩う

◎男湯
 露天風呂へ続く扉を開けた瞬間、ほうっと呟いてしまった。男湯の湯船は予想に反し梅の花を模したような木造りのやさしい形状だ。慌てて入口の暖簾を確認する。実はあとで知ったが男女の共同浴場は男湯と女湯が時々入れ替わるようだ。このたおやかな佇まいの湯に50半ばの男が一人、絵にならないその景色に独り苦笑しながら早速、湯に浸かる。こちらも女湯同様、半露天の開放的な造りだ。
 この施設に露天風呂しかないのは実は理由があるようだ。施設の湯は源泉から浴槽までの距離が60メートルと近く抜気が十分にできないため、安全のために、すべて露天風呂のみなのだそうだ。しかし、その条件こそが逆にお湯の素晴らしい鮮度を保っている。効果はさきほどの貸切風呂で私自身が体験済みだ。この効用に魅了された人々で施設はいつも賑わっている。今日は幸いにも自由自在に湯を愉しんでいる私たちだが、普段なら混雑を覚悟してでも訪れたくなる損はない温泉浴場だ。
 好奇心で湯をなめてみるとやはり少し酸味があった。ほてる体を半身乗り出し風にさらす。空を見上げれば雲間から射す朝日が天へ続く梯子のようだ。ぽたり、ぽたりと軒先からしたたる雪解けを見つめ、静寂なる景色に響く湯音に耳を澄ましてみる。
 どうやら少々のぼせたようだ。細君に声をかけそろそろ上がることにした。

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s07 座敷★DSCN6591.jpg
s38 ゴルフ場あと★DSC00282.jpg

 湯あたり気味の重い足を励ましながら階段を上り、休み処の座敷にゴロリと横になる。そんな私の姿にあらあら、と細君も呆れ顔。自販機で購入したキンキンに冷えた炭酸飲料を一気に体に流し込み、窓の雪景色を眺めながら、ぼんやりとほてりを冷ます。朝陽のせいか、頬をほんのり上気させた細君の肌がやけに綺麗だ。番頭さんによれば、ここの湯は美人の湯なのだそうだ。
 お湯加減はどうでしたか?と尋ねる番頭さんと、ひとしきりたわいのない世間話を楽しんだあと、ひとり、ふたりと現れた常連客の賑わいに、そろそろおいとますることにした。
 帰り道は宿で教えてもらった福島市街を一望できる展望スポット「高湯五感の森」へ。渡り湯のせいで未だ冷めやらぬ体に早春のそよ風が心地いい。目の前には白い平原が神々しいまでに輝いている。その清廉さに思わず心が奪われる。そういえば「雪」という字には“祓い清める”という意味を指す「雪ぐ(すすぐ)」という動詞があったと思いだした。
 季節はそろそろ雛祭り。ひな壇を飾る菱餅のピンク、白、緑の重ね順は丁度この季節、雪を境に地下と地上に繰り広げられる生命の息吹に女児の健やかな成長を願ったものだと言う。雪の下では今この瞬間も、生まれたての命が本番直前の出番待ちなのだろう。ある風流人の言葉を拝借すれば、雪は春の舞台のために天が遣わした美しい緞帳だそうだ。なんとも麗しい表現ではないか。



■高湯温泉・共同浴場「あったか湯」

〒960-2261 福島県福島市町庭坂字高湯25番地
TEL/024-591-1125
http://www.naf.co.jp/azumatakayu/attakayu/index.html

《営業時間・定休日》
9:00〜21:00(最終入館20:30)
毎週木曜定休(祝祭日の場合は翌日)
※営業時間や休館日は臨時変更あり

《ご利用料金》
大人(中学生以上) 250円(回数券・12回  2,500円)
小人(1歳以上) 120円(回数券・12回 1.200円)

《貸切風呂》
1グループにつき1,000円加算(50分)
※要予約・最終受付 19:00

〜貸切湯ご利用の仕方〜
人数分の入浴券の他に貸切料が1回1,000円かかります。 利用時間は受付で鍵を受け取り返却まで50分です。 予約は9時から19時までで、前々日朝より受付いたします。 定休日にご注意ください。(例えば土曜日の予約は木曜が清掃定休日のため金曜日からの予約となります)ご利用当日に使用不可となる場合がありますので、ご了承ください。 冬期は貸切湯が閉鎖となる場合もあります。(12月上旬〜4月上旬)男女湯温度の確保のために、貸切湯のお湯も投入いたします。


【泉 質】
 酸性・含硫黄(硫化水素型)
 −アルミニウム・カルシウム硫酸塩温泉(硫黄泉)
 (低張性−酸性−高温泉)

【源泉温度】51℃

【効 用】
 高血圧症、動脈硬化症、末梢循環障害、リウマチ、糖尿病、慢性中毒症、にきび、しもやけ、やけど、切きず、婦人病、不妊症、水虫、あせも、胃腸病、神経痛、慢性湿疹、便秘、脱肛、皮フ病、手足多汗症、アトピー性皮膚炎

[交通のご案内]

■東北自動車道
福島西I.Cから約30分
福島飯坂I.Cから約30分

■福島交通路線バス
JR福島駅西口から「高湯温泉」行・「高湯温泉駅」下車(約40分)



posted by yusanjin at 14:23| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする