2017年11月27日

高湯と微湯--2つの歴史美湯・静心山荘の秋遊び

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2015年10月某日

2つの歴湯に、秋の湯情緒を訪ねて

 列島を立て続けに襲った台風が過ぎ去り、空がようやく穏やかさを取り戻した10月下旬。高湯から程近い“微湯(ぬるゆ)温泉”の「旅館 二階堂」が今年7月、国の有形文化財に登録されたという。「玉子湯」(詳細はこちらのブログを参照)の茅葺き湯小屋にも通じるその風情も、ちょうど紅葉の見頃を迎えた頃だろうか。秋の湯情緒を一層引き立てる、由緒あるその2つの歴湯を訪ね、一路高湯へ。

01紅葉越しの市街s.jpg02薬師堂の紅葉s.jpg06玉子湯紅葉s.jpg

07玉子湯紅葉s.jpg08玉子湯紅葉s.jpg09玉子湯紅葉s.jpg

 紅葉のベストシーズンらしく、辿り着いた共同浴場「あったか湯」(詳細はこちらのブログを参照)の駐車場は満車状態。列を成す車の誘導に追われる係員の前を、吾妻スカイラインへと向かう車両が次々と追い越していく。
 その様子を遠目に見ながら、まずは「玉子湯」へ。本館のフロントで日帰り入浴の手続き(1人700円)を済ませ、ロビーのある4階から湯小屋のある1階へと向かう。敷地内を流れる川沿いに点在する湯小屋と露天風呂棟は、美しく色づいた庭園の中、秋の陽射しにのんびりと佇んでいた。先の台風のせいだろうか、白濁した温泉水が流れる川の水量は、いつもより轟々と賑やかだ。「玉子湯」の風呂は内湯も含め計7つ。とはいえ晴れやかな秋晴れの今日、夫婦や家族、背広姿のサラリーマンまで、日帰りに訪れた温泉客らしき一行は、みな面白いようにこの庭園風呂の奥へ吸い込まれていく(笑)。
 透明な空の高さに魅せられ、私たちもまた、開放感満点の露天風呂で五色の世界をどっぷり堪能。やわらかな光を反射し、周囲の彩りに一層映える翡翠色の湯は、短い吾妻の秋を謳歌するような、生き生きとした華やかさに溢れていた。

11静心山荘s.jpg14静心山荘客室s.jpg13静心山荘ムサシs.jpg

18静心山荘男湯s.jpg23静心山荘夕食s.jpg22静心山荘夕食s.jpg26静心山荘夕食s.jpg

28静心山荘客室より月s.jpg20静心山荘夕景s.jpg29静心山荘風呂廊下s.jpg30静心山荘男湯人s.jpg


寛ぎの贅沢ぬる湯で、愉悦ふたたび

 今夜の宿泊は以前、その居心地にすっかりハマってしまった「静心山荘」(詳細はこちらのブログを参照)を再訪。奥まった小径の先にある宿は、通りの喧騒と無縁の静けさだ。
 「また、お世話になります」と、挨拶しながら扉を開ければ、相も変わらず擦り寄ってくる宿の看板犬、ムサシくんがお迎え。少々お疲れ気味の様子が気になり伺えば、「人間でいえばもう百歳近くだから」と宿のご主人。仙人の髭を思わせるふわふわと真っ白なその毛並みを撫でながら、ふと“白秋”という言葉を思い出す。陰陽五行の世界では“秋”は白”だ。“青春”という言葉と対照的に、“白秋”は落ち着き深みの出てくる年代にも例えられる。この季節にムサシ君と再会できたことも、何かのご縁だろうか。
 オーナーご夫妻が2人で切り盛りする宿は、客室数わずか4室。それゆえに、いつ訪れても親戚宅を訪ねたような温かな雰囲気が魅力だ。今日のお部屋は、山の景色を望む最上階の3階。荷物を下ろし部屋で少し寛いだ後、楽しみの食事の時間まで早速、ひと風呂浴びることにした。
 勝手知ったる足取りで、本館から続く長い渡り廊下をトントンと上り湯棟へ向かう。宿の風呂は内湯のみ。ここの特徴は、高湯でも珍しい“ぬる湯”だ。本館から100m程先にある独自の泉源から引湯しているという湯は、泉源が44度程度と低く、浴槽内では40度前後と、まさに“人肌湯”。それゆえに長湯ができると評判で、定期的に訪れる常連客も多い。
 湯とひたすら向き合うことに徹した簡素な浴室は、物静かな風情がある。貸切風呂気分で外の景色を望む窓を開け放ち、手足を開放して身を預ける至福の時間。湯上り後、連れとぶらりと散策に出た山の斜面に広がる約4,000坪もの広い庭からは、遠くに福島市街の夜景も見渡せた。
 すっかり陽が落ち、お腹も心も満を持して迎えた夕食。アケビの肉詰めに栗の渋皮煮、焼き茄子にセリ鍋。豊穣の季節を迎え、女将さんの作る手料理は、今夜も食指をそそる旬味揃いだ。中でもビーツやアボカド、2種類のポテトサラダにいくらやエビを乗せたセルクル仕立ての前菜は、ひときわ目を引く華やかなひと品。宿の夕食はすべて女将さん任せのシークレットディナーだ。次に何が出てくるか分からないワクワク感も、ここの魅力だろう。今夜の後出し料理は、里芋のあんかけ蒸しに鯛のカルパッチョ、塩麹漬け鱈のアーモンドオイルソースの3品。食堂と隣り合う厨房から出来立てのアツアツで運ばれてくる味わいは、立ち上る湯気もご馳走のひとつだ。
 冴え冴えとした月を仰ぐ秋の夜。賑やかな夕食から半時も経てば、オーナー夫妻も別棟の居宅へ戻り、宿はまたいつもの静けさに包まれていく。就寝前には再び風呂へ向かい、今夜も貸切宿気分の湯三昧(笑)。

31静心山荘3階より朝景s.jpg32静心山荘朝庭s.jpg36静心山荘朝庭s.jpg

34静心山荘朝庭s.jpg38静心山荘朝食s.jpg37静心山荘朝食s.jpg40静心山荘朝男湯s.jpg

 空気に色を挿したかのような早朝。黄金色に輝く山々の美しさに魅せられ、二人でぶらりとまた外へ。斜面の奥まで綺麗に草刈りされ、冬迎えの準備をすっかり整えた庭で、連れは童心に返ってどんぐり拾いを愉しんだようだ(笑)。朝食後は名残惜しげに秋の陽が射し込む耽美的な浴室で長湯にひたり、見納めの季節を心に留める。
 ちなみにぬる湯と言えども、そこはやはり高湯。温泉成分の強さから、「静心山荘」の部屋にトイレや洗面はない。水回りは共同だ。これで宿泊料金は一律8,500円。自由奔放な居心地と満足度の高い手料理の値ごろ感は、足繁く通うリピーターの多さが証明している。宿の日帰り入浴では、部屋の利用も可能だ(2,000円/10〜15時)。体に無理を強いないスタイルで、ゆるゆるとこの雰囲気を気軽に楽しんでいただきたい。

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48二階堂全景s.jpg49二階堂帳場廊下s.jpg

微湯温泉の一軒宿、旅館 二階堂

 続いて向かった「微湯(ぬるゆ)温泉」は、高湯から一旦山を下り、途中の“県道ぬる湯線”を曲がるか、もしくはそのまま県道5号へ向かい、国道115号方面へ車を進める道すがら「微湯温泉」と書かれた看板の指示に従い、再び山道を登った先にある。現地までは車1台がやっと通れる程の、不安な小道が延々約8km続く。だがその心細さの先、鬱蒼とした林を抜け視界が開けた山中の台地に、タイムスリップしたかのような別世界が待っている。
 「旅館 二階堂」は、知る人ぞ知る山奥の一軒宿だ。言い伝えによれば、ここ微湯温泉は享保年間(1716−1735)には、すでにその存在が知られていたという。宿の歴史は1803(享和3)年、初代、傳四郎が桜本村(現:福島市)から譲り受け、湯治者を受け入れたことに始まる。四代目の清三郎の時代には、戊辰戦争によって高湯同様、ここも焼き討ちとなったが、その後再興。三棟連なる建物は奥から“古家棟”、“中座敷棟”、“帳場棟”と続き、最も旧い“古家棟”は1872(明治5)年頃の建築だという。この歴史的価値が今年、国の有形文化財として認められた。
 微湯温泉の標高は約920m。吾妻小富士の東山麓に位置し、吾妻山への登山道入口でもあるここは、高湯より紅葉の進みが少し早いようだ。駐車場に車を停め、色づいた楓のアプローチ越しに佇む茅葺き家屋の渋さは、まさに感嘆!のひとこと。

60二階堂廊下s.jpg53二階堂男湯s.jpg54二階堂男湯s.jpg

57二階堂客室よりs.jpg62二階堂全景s.jpg


眼病の名湯、日本ぬる湯番付“東の横綱”

 はやる気持ちで入口の木戸を開け、早速、帳場で日帰り入浴(1人500円)の手続き。湯棟は帳場から続く、いい味わいに年季の入った長い廊下の先にあるらしい。
 宿の風呂はここも内湯のみ。湯船は脱衣所から階段を3段程降りた低い位置にあった。見ればこの季節にも関わらず、湯気が全く立ち上っていない。それもそのはず、ここ“微湯温泉”は、「静心山荘」の“ぬる湯”のさらに上をゆく低温泉。その温度は32度前後と、まさに温水プール並み。そうとは知りつつも、湯桶で肩から勢いよく浴びた“かけ湯”の冷たさに思わず「!」と、震え上がる(笑)。風呂は贅沢な源泉掛け流し。聞けば30分くらいじっくり浸かることで、ジワジワと体の中から温かくなってくるらしい。とはいえ、特に秋はこれがなかなかの辛抱だ(笑)。よく見れば、源泉浴槽の奥には体を温めたい客や、“上がり湯”用に、蓋をして42度前後に保温した沸かし湯のポリバスがもうひとつある。我慢できない方はこちらで暖を、との配慮だろう。
 近年、“ぬる湯”は体への負担が少ない温泉として、その健康効果が見直されてきている。微湯温泉の成分に含まれるミョウバンは、目薬やうがい薬にも使われる殺菌作用でも知られ、ここは古くから「貝掛温泉」(新潟県)、「姥子温泉」(神奈川県)と並び、“眼の三大温泉”と言われる名湯らしい。そのため、宿には湯治や長期滞在を希望する客のための自炊室もある。もちろん通常の宿泊も可能だ。広い敷地内には山桜の並木道の他、シャクナゲが自生する庭園もあり、毎年5〜6月には豪華な花のリレーも楽しめるようだ。

58二階堂廊下s.jpg67二階堂客室帳場棟上s.jpg63二階堂客室帳場棟上s.jpg

71二階堂客室中座敷棟s.jpg68二階堂 碁s.jpg50二階堂猫s.jpg56二階堂湯廊下よりs.jpg75二階堂庭紅葉s.jpg

 ちなみに標高の高さから福島市内が30度超えの真夏日でも、ここ微湯温泉は24度程度と過ごしやすく客室にエアコンはない。また「静心山荘」同様、トイレや洗面等の水回りも共同だ。さらには携帯電話も繋がらない(帳場の公衆電話を利用)。冬は宿に続く道が雪で閉ざされるため、11月初旬から4月末までは冬季休業という潔さだ。光と影が遊ぶ陰影礼讃の建物は、風格というよりも微笑ましい慎ましさで、歪んだ昔硝子やギシギシと鳴る床、秋には客の布団の中に潜り込んでくる人懐っこい宿猫たちなど、心癒される物語に充ちている。
 快適さがスタンダートとなった時代、趣異なる2つの素朴な宿遊びに興じた秋。心を開放しすべての出会いを楽しめば、旅はいつも発見と共感の連続だ。「旅館 二階堂」の今秋の営業はそろそろ終了。タイムトラベラーのように、この懐かしさを訪ねたい方は、山に再び息吹が充ちる輝きの春、待ち焦がれた思いとともにその贅沢な夢に温もっていただきたい。




■旅館「玉子湯」
〒960-2261 
福島県福島市町庭坂字高湯7 
TEL/024-591-1171

チェックイン 15:00  ・チェックアウト 〜10:00 
日帰り入浴/10:00〜14:00(最終受付13:00) 700円
※定休日/水曜日

[入浴時間]
露天風呂と湯小屋「玉子湯」は6:00〜22:00
大浴場「滝の湯」と内湯「仙気の湯」は0:00〜24:00

[温泉の利用形態]
天然温泉・源泉100%。完全放流式、加水なし、加温なし 

<div>[アメニティ]
 大浴場と内湯/シャンプー、リンス、ボディーソープ、石鹸、ドライヤー等

[交通のご案内]

■東北自動車道
福島西I.Cから国道115号線〜県道5号線16km(約30分)

■福島交通路線バス
JR福島駅西口から「高湯温泉」行・「玉子湯前」下車(約40分)

※福島駅西口まで送迎いたします(要予約)
【お迎え】午後3時15分/【お送り】午前10時30分


■「静心山荘」
>〒960-2261 
福島県福島市町庭坂字高湯14-1
TEL/024-591-1129

チェックインは予約時に自己申請制
日帰り入浴/400円(10:00〜16:00) ※電話をすれば時間外も可

[入浴時間]
日帰り入浴/お部屋貸切2,000円(10:00〜15:00)

[温泉の利用形態]
天然温泉

[アメニティ]
 シャンプー、リンス、ボディソープ

[交通のご案内]
■東北自動車道
福島西I.Cから国道115号線〜県道5号線16km(約30分)

■福島交通路線バス
JR福島駅西口から「高湯温泉」行・「高湯前」下車(約40分) 徒歩約2分


■微湯温泉 「旅館 二階堂」
〒960-2151 
福島県福島市桜本字温湯
TEL/024-591-3173(冬季休業中の連絡先/024-591-3606)
日帰り入浴/個室休憩:1時間500円
      入浴料:500円
      ※詳しくはお問い合わせください

※11月下旬〜4月下旬まで冬季休業
※マイカーでおいでの場合はナビのご利用をおすすめ

[入浴時間]
日帰り/10:00 〜 15:00
宿泊/24時間(21:00〜22:30の清掃時間を除く)

[温泉の利用形態]
泉質/含アルミニウム泉 泉温/32度(旧泉質名/含緑ばん、酸性明ばん泉)
天然温泉・源泉100%。完全放流式、加水なし、加温なし 

※古来より「眼病」「皮膚病」「化膿症」に効く名湯として知られ、治癒の例も多い。
日本ぬる湯番付では「東の横綱」とされ、効能の程が証明されている。

[アメニティ]
タオル、浴衣セット、歯ブラシ

[自炊室]
洗濯機、炊飯器、電子レンジ、ガス台、大型冷蔵庫、鍋、食器類

[交通のご案内]
■東北自動車道
福島西I.Cから県道ぬる湯線経由(約40分)

■福島交通路線バス
JR福島駅西口から「土船」行・「水保駅」下車(約20分)
水保より当館送迎バス(約30分)
※送迎バスの時刻はあらかじめお問い合わせください。



posted by yusanjin at 13:17| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする